働き方改革による長時間労働の上限規制が建設業は2024年4月1日に適用となる。残り3年を切った今、すでに週休2日や残業時間の上限設定などの取り組みに着手した会社もあれば、対応はこれからといった会社もみられる。企業の取り組み状況を追った。
「昨年から固定残業制にして先に40時間分の残業代を払うことにした」──。そう話すのは社員約50人を抱える、土木工事主体のある建設業経営者だ。「一人一人と面談して、上限を超えないよう、効率的に仕事を進めるよう指導している」とする。
固定残業制度は、あらかじめ一定の残業をしたものとみなして一定額を固定して支払うもの。同社は技術職については40時間、事務職と技能職については20時間分を月給で支払うことにした。固定残業制を導入したことにより、年間に掛かる残業代は数千万円にも及ぶという。40時間を超えた残業についても差額を支払う必要がある。そのため、「タイムカードも止めてスマホのアプリで出退勤を細かく管理する。当社の勤務時間は午前8時から午後5時。就業時間の30分前に出社して30分遅く帰ると、それだけで1時間の残業になってしまう」。
始業時間は、作業を行うために必要な打ち合わせやKY活動、材料の準備や作業服への着替えなども含まれる。終業時間でも、後始末や清掃、作業後の点検整備や翌日の段取りなどが含まれる。こうした労働時間の定義も伝え、制度の導入に踏み切ったという。
「それでもまだ、遅くまでいる人はいる。粘り強く指導していくしかない。とにかく社員の意識を変えていく。そんな思いで導入した」
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30人規模の電気工事業を営むある経営者は、「当社は昨年から週休2日制にして、40時間を超える残業はしないようにし、どうしても残業せざるを得ない場合は、超えた分を賞与で対応するようにした」と話す。
「一人に仕事が集中しないよう案件を管理して、業務の平準化を図りつつ、生産性を上げてもらうよう指示したところ、皆、ちゃんと生産性を上げてくれた。中には5倍くらい上がった人もいる」
具体的には「あえて出席しなくてもいい打ち合わせはなるべく行かないにようにして、メールや電話で済ませる。本当に行くべき打ち合わせか、間接経費に対して意識するよう自ら判断してもらう」ようにして、生産性を上げているという。
また、「現場調査も、あらかじめ担当者に確認し、事前に対応しておく。それをせずに行って、指摘された後に対応すると、余計な時間が増える。そのためにも、工事に入る前に担当と良い人間関係を築いておくことが重要だ」とする。
取り組みを進めたことにより着実に成果を挙げたといい、課題はほとんどなく「残業時間の上限設定をしたところ、……<続きはこちら>