「水防災」とともに「地震」の備え必須
2011年3月11日の東日本大震災から10年が経過した。震災発生当時から県内建設団体や企業は被災地の支援に駆け付け、復旧・復興を支援した。地震の影響は県内でも大きかった。翌12日に栄村で最大震度6強を記録する「長野県北部地震」が発生。死者3人、周辺市町村も含めると負傷者67人、住宅の全半壊397棟という被害を出した。栄村では、その後15年まで約4年間かけて復興事業が進められ、県では昨年11月に県道箕作飯山線の明石大橋の開通をもって、県内の事業が一区切り付いた。被災時、代替路線のなかった国道117号が通行不能となったが、この路線の完成により緊急時の迂回路が確保されることとなった。
東日本大震災から10年が経った(写真は陸前高田市)
県内では、19年10月の台風19号(東日本台風)の復旧・復興が佳境となる中、これから昨年7月の豪雨災害による被害への対応が本格化する。新たな「5か年」により、「防災・減災、国土強靱化」の加速化へ向けた取り組みも始まる。
「防災」の取り組みにおいて、特に19年10月の東日本台風の影響から水害への備えに注目が集まる形ではあるが、最近も2月13日に東日本大震災の余震とされるマグニチュード7・4、最大震度6強の地震が発生するなど、地震対策も引き続き重要となる。
もしも県内で糸魚川-静岡構造線の全体が動くような大きな地震が発生した場合、2015年の県の試算によれば、最大で死者が7千人を超えるという。甚大な被害が懸念される南海トラフ地震の30年以内の発生確率は80%あり、首都直下地震にも地理的に近い。加速化対策でも、先ごろ公表された国の箇所付には、災害時の交通を確保するための道路整備など備えが盛り込まれている。
■事前予防への対応これから
土木分野では、現在、橋梁やトンネルの長寿命化、緊急輸送道路ネットワークの構築などといった対策が進められている。しかし、2月17日に開かれた長野県道路メンテナンス会議では、県内にある橋梁全3341橋について、早急に措置を講ずべき判定区分Ⅳが5橋、早期に措置を講ずべき区分Ⅲが256橋、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましいとする区分Ⅱが1714橋あるとされた。年々老朽化が進む構造物を計画通り、事前予防的に対応していくためには、5年だけではなく、その先も見据えた事業費の確保が求められる。
■民間建築の耐震、遅れに指摘
建築でも対応は必須だ。 現在、県がまとめている「長野県耐震改修促進計画(第Ⅲ期)」案では、緊急輸送道路に面した建築物は14年時点で3064棟あり、「耐震診断が進んでおらず、耐震が確認されていない建築物が多く存在」しているとする。
また、18年時点で耐震性がないとされる住宅は県内に約14万戸あるとされ、全国より約4・5%低い状況。多数の人が利用する一定規模以上の建物のうち、20年1月末時点で耐震性がない、またはないと推測される建物は548棟存在するとしており、民間建築での遅れが指摘されている。
3月12日には長野県でも大きな被害が出た(写真は栄村)