「デジタル化」による効率化だけではDXにならない

■DX推進へ国が方針公表~設計・施行だけでなく日常業務にも注目

 国土交通省は2月9日、昨年7月からまとめてきたインフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)施策を公表した。同省ではこの施策によって「社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方の変革」を進める。新型コロナウイルスを契機とした新しい働き方への転換が進むなか、建設業界でも対応は必須。ICT建機や3次元データ対応といった「デジタル化」だけにとどまらず、業務全体の変革に向けた取り組みが求められている。(酒井真一)


 国交省が進めるDXの背景にあるのは、人手不足やインフラの老朽化といった建設現場の課題解決と同時に、技術革新や感染症などに対する対応、行政のデジタル化などの社会情勢の変化だ。
 建設業は生産性向上に向けたi-Constructionを進めてきた経緯があり、新技術への対応は他業界に比べても遅れてはいない。しかしながら、特に地域建設業ではDXの対応ができていないという声が聞こえてくる。県内企業に取り組みについて聞くと「ほとんど取り組めていない」(中信のゼネコン執行役員)、「検討中」(北信のゼネコン取締役)、「社会的な流れというが、何から取り組めばいいのかわからない」(北信のゼネコン取締役)という回答がほとんどだ。「そもそもDXってなんだ?」という声もあった。
 DXはデジタル・トランスフォーメーション、日本語訳すれば「デジタル変革」となる。経済産業省のDX推進ガイドラインによれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」だ。
 ここで重要なのは「製品やサービス、ビジネスモデルを変革」するとともに「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革」するとなっていること。デジタル化し、新技術を活用してサービスや仕事を変革するだけでなく、業務、組織、そして企業文化や風土まで変革することが重要となる。つまり、「効率化」が目的だったデジタル化ではなく、そうしたデジタル化を手段として、業務全域での変革を進めることを指す。
 このため、i-Constructionなどによる設計・施工のデジタル化は進みながらも、全体としては「できていない」という現状が見えてくる。

■清水建設が日常業務を柱の一つに
 こうした建設業界において、「日常業務のデジタル化」「ものづくりのデジタル化」「提供する施設・サービスのデジタル化」を3本の柱として改革を進めているのが清水建設(東京都)だ。
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新建新聞2021年3月5日号掲載