指導監査の書面方式、来年度全面施行

ICTで本庁と現地のズレ指摘 ○県担当部局との意見交換会(県土木施工管理技士会)
 長野県土木施工管理技士会(野島登会長)は2月17日、長野県の公共事業担当部局との意見交開会を長野市内で開催した。技士会側から正副会長と理事・監事、技術委員が出席。県からは建設部の技術管理室と道路建設課、環境部生活排水課、農政部農地整備課、林務部森林政策課、会計局契約・検査課の担当者が参加した。 

 小規模補修工事について技士会側から交通誘導員が確保できず、経費算出を普通作業員で計上したが、査定時に交通誘導員の単価に減額されたとして説明を求めると、県側は「直接費の単価については受注者に了解を得たうえで発注者が適当と判断する単価に修正する場合がある」と説明。「交通誘導員の確保が困難で自家警備で対応した場合、原則主たる業務が交通誘導業務と判断されれば交通誘導員の単価に修正している」とした。さらに、「2月1日以降に起工起案した工事で、交通誘導員の設計労務単価と実勢価格に乖離が生じて不調・不落となった案件について、見積もりを徴収して予定価格を設定することも始めている」と紹介した。 
 今年度試行している指導監査の書面方式について、技士会側から「効率を考慮して適用対象の拡大を早急に検討してほしい。竣工検査も情報共有システムで事前確認が可能な書類は書面で確認し、竣工検査の時間短縮を図ってほしい」と要望。県側は「書面方式の指導監査は今年度、全体の約7割で実施し、竣工検査の状況などを検証したところ大きな問題はないと確認された」と説明。「今後、原則書面方式で指導監査を行うよう要領の見直しに取り組んでいる。次年度中に施行したい」と回答した。情報共有システムについては「主に書面方式の指導監査や元請下請関係の適正化調査に積極的に利用している。竣工検査では可能な範囲で活用する」とした。 
 このほか、フリーの意見交換ではICT活用工事について「担当者レベルで認める、認めないがある」との指摘があり、「費用対効果から『有用性は認められない』と判断されて採用できなかった」との訴えに、県側は「技術管理室と現地の考えに乖離があることをお詫びしたい。周知が足りなかった」と述べ、「原則すべての工事を対象に、一部活用も可能とし、実績も付く。効果が上がるところは積極的にICTを活用いただきたい」と回答した。ただ、農地整備課からは「取り組みを妨げるものではないが、事業によっては一部地元の農業者に負担をいただいている場合があり、事業費が上がると負担が増えることもある」とし、建設部発注の工事と同様にはいかないケースもあることを伝えた。 
 技術管理室の青木謙通室長は「昨今の課題は施工確保対策。復興JVの適用や不調・不落が予想されるものには見積もりの活用など、盤石な体制で施工確保に努める。先にあるのは担い手の確保。提案議題が遅々として進まない面もあるが、一歩一歩解決していきたい」とした。 

■書類簡素化「最終的に災復工事と同内容に」 
 当日は、昨年10月から工事書類簡素化の試行が行われていることを受けた意見交換を別途開催。4月からの本格実施に向けて議論を交わした。 
 議題は◇働き方改革に即した簡素化◇材料承認願いの電子化◇工事書類簡素化ガイドラインで示された「提示」の解釈◇作成書類の厳格化◇提出書類の省略◇出来型管理―の6項目で行った。
 働き方改革に即した簡素化について、技士会側から「試行中の簡素化により作業がだいぶ楽になったが、さらなる簡素化として現在の台風19号災害の復旧工事に適用している内容で検査をしてほしい」との要望に、県側は「工事書類の簡素化については、最終的に災害に適用している簡略化とほぼ同じ内容にしたいと考えている」と説明した。 
 提出書類の省略について、技士会側から検査時の生コン伝票について「監督員が確認していれば提示は必要ないと思う」とし、さらに「生コンの塩分測定について各工場で試験している結果があるので、現場での試験はいらないのでは」と意見。県側は生コン伝票について「品質管理や出来型管理に問題がない場合には提示を求めない。が、品質に疑義が生じた場合、確認のため提示を求める場合がある」と回答。塩分測定については「品質管理基準の定めによっている。実態として基準以下になることは明白と承知しているが、品質管理基準と違うことを定めることはローカルルールを定めることになり、今後の議論としたい」とした。 
 出来型管理について「検査記録表を工事工種類ごとに作成しているが、設計図へ直接手書きで検査値や検測日を記入したもので行えないか。また、10点管理により、現場の内容が単純でも延長が長くて測点が多いものなど管理図表を作成することで評価につながると聞く。重要構造物のみを対象としてほしい」との意見には「検査記録表は10月からの試行で段階確認の資料としないこととしている。管理資料の頭に『段階確認書』と付けて行っている。10点以上の管理についてはバラツキの評価という項目に当てはまる可能性があり、今後の議論としたい」とした。
 このほか県側から、昨年10月から試行している工事書類簡素化ガイドライン(案)の追加として◇下請負人一覧の作成は不要、施工体系図に替える◇建設リサイクル法に基づく告知書の提出は不要◇再生資源利用(促進)計画書はCOBRISの場合は提出不要◇施工体制台帳の作成の取り扱い見直しによる変更◇設計図書照査確認資料工事測量結果は場合によって報告に替えて連絡で可◇立会依頼を明確化◇段階確認関係書類の取り扱い―などについて説明がなされた。
 今後取り組む簡素化として◇100%出来型展開図◇再生砕石と再生アスファルト合材の一括承認◇生コンの品質管理における施工者の評価―も紹介された。
 野島会長は「3年後の4月より建設業でも残業時間、休日出勤の上限規制が適用され、建設現場での勤務態勢に大きく影響する。生産性の向上や休日の増加、残業減少が必須となる。長年の要望である工事書類の簡素化に引き続き取り組み、現場技術者の負担軽減につながっていくことを期待したい」とした。