ダンプの荷台に積んだ積載物が最大量を超えてしまう過積載は、以前から大きな事故を招く原因として問題視されており、現在では企業のコンプライアンスに関わる課題にもなっている。
県松本建設事務所の発注で、塩尻市南原の川鳥沢で進む砂防えん堤の建設現場では、この過積載防止対策にICTを活用している。掘削残土を積み込むためにバックホウがダンプに近づくと、バックホウのコックピットに設置したiPadに現在のダンプの積載量が表示される仕組みを導入。これにより、誤って最大積載量を超えた残土を積むことがないようにしている。残土処分運搬時におけるICT活用は、県内でも数少ない取り組みだ。
また、ダンプの運行管理にもスマートフォンの位置情報を活用。ダンプの運転手同士が互いの走行場所を把握し、すれ違いポイントを意識して運行することで、狭い集落内の工事用道路などでダンプのすれ違いを無くすことにも成功している。
■バックホウのバケットで土量計測、システムで一元管理
使用するシステムでは、バックホウ側でバケットの残土の重量と体積を計測し、スマートフォンを置いたダンプごとにシステム上で一元管理。バックホウがダンプに近づくと、コックピットに設置したiPadモニターにダンプの現在の積載重量が「㎏」と「%」で表示される。
施工を担当する清沢土建(塩尻市)の下川浩明氏は、残土積載時にバックホウ側でこの情報を見ることで、「確実に過積載を防止できる」という。
同システムを使わない場合、通常は荷台のラインを目印にダンプへの積み込み作業を行うことが多く、「雨による土量の重量変動などに気づかずに最大積載量を超えてしまうことがあり得る」(下川氏)。そこで、同システムによりダンプに積むタイミングで正確な土量が数値で表示されれば、そうしたミスを防ぐことが可能だ。また過少積載も避けることができるため「効率化にもつながっている」と下川氏は話す。
■スマートフォンでダンプの位置情報を把握
積載量の計測はバックホウ側で行い、ダンプごとの管理はシステム側で行うため、ダンプには位置情報を確認するためにスマートフォンを設置するだけでいいのも特徴の一つ。
加えて、ダンプの運転手同士でもお互いの位置情報を把握することができるため、狭い集落内の工事用道路などでは運転手が事前に決めたポイントや距離などを守ることですれ違いを無くし、「安全な残土運搬作業を行うこともできる」(下川氏)という。
■ICT 建機を使った掘削や法整形も実施
同現場では、砂防えん堤の床掘や埋め戻し作業における法面整形でもICT建設機械を活用している。砂防堰堤の作業土工では、起工測量から3次元データの活用、マシンコントロールによる自動掘削作業など、出来形管理まで一連の作業で使用。下川氏は「床堀掘削の高さ管理が容易で過掘りを防ぐことができ、丁張作業も不要なため、通常2カ月ぐらいかかる作業を1カ月に短縮できている」という。