コロナで建設産業の工業化が進む?

モジュール化と建設業を変える9のシフト
レポート『建設産業の次の常態』~マッキンゼーが予測~

 アメリカの経営コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーが6月に発表した無料レポート『The next normal in construction(建設産業の次の常態)』。新型コロナウイルスの影響により、建設業が直面する変化をまとめたものだが、緊急事態宣言解除後、県内ではむしろ拡大を見せている新型コロナの影響を受け、再び注目が集まっている。

 同レポートでは、世界最大の産業とする建設業について「過去20年間、毎年1%のわずかな生産性の成長」だったとしたうえで、新型コロナが「変化を加速させるようにみえる」とする。そこで起きるのは、建設産業の工業化へのシフトだ。

 具体的には、案件ごとに設計し、輸送し、現場ごとにゼネコン管理のもとでつくる現在の姿から、複数の現場で使われる部材をモジュール化して大量生産し、それを物流に載せて搬送、各現場で同じような構造物を組み立てるようにしてつくるようになる-とする。

 これによって従来のゼネコンの価値が10~20ポイント低下(全体の20~25%を占めた価値が5~10%になる)、サブコンの価値が5~10ポイント低下する(全体の9~13%を占めていた価値が2~7%になる)としている。一方で工場生産の価値は20~30ポイント上昇する(0~1%だった価値が20~30%になる)という。

 レポートでは、これからの建設業を根本的に変えるものとして、9のシフトを提示している。「製品ベースのアプローチ」「専門化」「バリューチェーンの制御と産業サプライチェーンの統合」「統廃合」「顧客中心主義とブランディング」「技術や設備への投資」「人材への投資」「国際化」「持続可能性」がそれ(図)。レポートでは、公共予算と住宅への持続的なコスト圧縮や熟練作業員の不足、安全性と持続可能性への厳格化などの背景と、新しい生産技術や新素材の開発、デジタル化、(建設産業外からの)新興企業の参入などが背景にあるとしている。

 ただし、レポートの事例で主に挙げられているのはビルなどの建築物で、土木と建築では影響に差がありそうだ。建築では現在、すでに大型パネルの活用などが進み、大規模建築物でもモジュール化の流れが見られるが、土木工事では現場ごとに環境が違い、様子が異なる。レポートでも「変更の規模とペース、および適切な対応は、不動産、インフラストラクチャー(中略)などによって大きく異なる」としている。(酒井真一)