下高井郡山ノ内町の横湯川で県北信建設事務所が建設を進める「新仏岩1号えん堤」では、えん堤本体工事に現地の土砂をより多く活用することができる流動タイプの「砂防ソイルセメント工法」を採用している。同現場ではφ500mm 程度の粗石をそのままソイルセメントの母材として利用しており、本堤全体の材料としての使用は全国初の事例となっている。
■コンクリートえん堤から変更
「新仏岩1号えん堤」は、山ノ内町平穏にある地獄谷野猿公苑の直上流300mに位置する。当初は、コンクリートえん堤で建設が計画されていたが、現場条件から生コンの運搬が困難と判明。
そこで、現地発生材を有効活用できる流動タイプの「砂防ソイルセメント工法」に変更した経緯がある。 砂防ソイルセメント工法には、「流動タイプ」のほかに「転圧タイプ」があるが、同タイプでは母材をφ150 ㎜以下にふるい分けし、セメントと混合し転圧する必要があるため、河床にφ500mm程度の粗石が多数点在する同現場では、粒径処理に時間が掛かることや、砂防ソイルセメントの母材が足りなくなるなどの恐れがあった。試験施工を行う中、配合や混合方法を工夫することで隙間が生じやすい粗石が使用でき、現地の土砂を有効活用できることが確認でき、「流動タイプ」を採用した。
■急こう配で狭い現場でも建設可能
工事を進める県北信建設事務所によると同工法の採用で「長距離でかつ急勾配の続く工事用道路を利用した危険な建設資材の搬入を極力減らすことができている」という。
「さらに現場の施工ヤードも狭いので、重機の数も減らす必要があったが、それらの課題もクリアすることができている。コストがかかることは避けられないが、それを補うだけのメリットを感じている」
この他、高い強度が求められる鋼製スリットの基礎部や堤冠部には、現場練りコンクリートを使用している。現場練りコンクリートの製造ヤードに関してもスペースに制約があったことから、骨材を生コン工場のプラントで事前計量して袋詰めで現地に運搬し、セメントと練混ぜる方法で工事を行っている。
■コストに課題も、選択肢広がる
県北信建設事務所では「コスト面の検討はもちろん必要だが、生コンを運搬できないような厳しい条件の現場でも砂防えん堤の建設が可能となった」としている。
「今後、さらなる施工性の向上を検討していく必要があるが、同工法により、砂防えん堤構築技術の選択肢が広がったのではないか」