【第4回】
パネルディスカッション「流域治水におけるグリーンインフラの役割」
CO2バンク推進機構が8月10日に開催した「ゼロカーボン長野プログラム2022 グリーンインフラフォーラム オンラインシンポジウム~流域治水におけるグリーンインフラの役割と可能性~」。基調講演とパネルディスカッションの模様を紹介する連載の第4回は、パネルディスカッション「流域治水におけるグリーンインフラの役割」を取り上げる。
―千曲川河川事務所・中根達人所長による話題提供
千曲川河川事務所では、令和元年東日本台風による被害を受け、緊急治水対策プロジェクトを令和9年度の完了を目標に県や市町村と連携して進めている。完了後も中長期の河川整備計画として必要な治水対策を河川管理者だけでなくあらゆる関係者と協働で進めていきたい。
昨年制定された流域治水関連法の付帯決議を受け、今年3月にはこれまでの信濃川水系流域治水プロジェクトの中にグリーンインフラの推進を盛り込み公表した。例えば「かわまちづくり」。北信5市町(長野市、須坂市、小布施町、中野市、飯山市)では、千曲川を軸に観光に生かすための護岸整備や遊歩道整備などに取り組んでいく。周辺の環境拠点と連携してグリーンインフラを兼ねて進めていきたい。
―県建設部・小松誠司次長による話題提供
県では令和3年4月に信州まちなかグリーンインフラ推進計画を策定した。この計画では、「2050年『まち』が『みどり』であふれる」をスローガンに5年間のアクションプランとして市町村や民間事業者への浸透やモデル事業の実施をはじめ、公民連携でまちづくりに取り組む3つの行動方針を定めた。
流域治水では、令和3年4月に県独自の推進計画を制定。県と市町村が協力して取り組む決意表明として「治水ONE NAGANO宣言」を行い、普及啓蒙活動を進めている。
グリーンインフラにつながる河川整備の事例では、上田市依田川地区のかわまちづくりや松本市の多自然川づくりがある。地域の特性に応じた河川整備を積極的に進めていきたい。
―ランドスケープコンサルタンツ協会・金清典広会長による話題提供
ランドスケープの特徴をつかむ中に、1968年のイームズの「Powers of Ten」、1969年のマクハーグの「Designs of Nature」がある。小さな場所を考えるために、もっと広く周りを見ていくこと、さらに中まで入って小さな世界に没入していくこと、スケールを行き来する中でさまざまな発見がある。今ではGISを使って簡単にアクセスできる便利な時代になった。
山や川など自然の動きだけでなく、そこにある人の暮らしや文化を総合的に見ていくことが重要。流域の暮らしをみていくと、その地域のあるべき姿が見えてくる。ポートランド市環境局のドーンウチヤマ氏は「グリーンインフラづくりはすべての人々の仕事。みんなが関わることが大事。誰にでも貢献できることがある」と言っている。
また、「次の世代を今呼び込み、アイデアを共有して一緒に問題を解決していこう」としている。私たちは北海道で花と緑で地域を元気にしようと活動してきた。こうした活動が定着していき賛同者が増えることで、新しい地域文化をしっかり紡いでいくと確信している。(次号につづく)