桑原賢司さん(ヤマウラ・駒ヶ根市)

国土交通省優良工事技術者局長表彰を受賞、社内ワーキングGの存在に感謝

 2020年度の国土交通省中部地方整備局・優良工事技術者の局長表彰で唯一、砂防関係工事での受賞があった。ヤマウラ(駒ヶ根市)の桑原賢司さんだ。受賞現場は「平成30年度天竜川水系中田切砂防堰堤工事」。今回の局長表彰を「たまたま」と謙遜するが、砂防の将来についてしっかりと見据えている。「砂防のわかる若手を育てたい」。受賞を受けた思いとこれからを聞いた。

 今回、優良工事技術者の局長表彰を受賞した。土木一筋で国土交通省の砂防工事に長く携わった苦労人。ようやく建設技術者としてトップの座を射止めたが「たまたまです。運に恵まれた」と謙遜する。
■日々緊張感持ち安全管理
 受賞現場では、堤体本体の右岸と左岸を同時に施工するため「工期や工程の短縮、安全管理を工夫した」という。「締め切りの切り替えが大変でしたね」 コンクリート打設では、中2日の試験打設に取り組み、積極的に協力。温度応力解析により、適切な養生日数を割り出し、構造物のひび割れを抑制しながら工期短縮を実現した。「社内でワーキンググループ(WG)を設置し、技術本部のスタッフとともに取り組んだ成果」と、会社のバックアップ体制に感謝する。
 また品質管理では、コンクリート打設に数種類のバイブレータを導入。狭い所は背負い式のバイブレータ(コードレス)、広い所はバイブレータ機能付きのバックホウ「バイバック」を使い分け、効率化を図り、高品質な製品に仕上げた。
 安全管理ではVRの使用や昇降設備を充実させたほか、これまでの鋼製型枠大判ユニットにキャットウォークの足場をセット(写真1)。高所の危険作業を低減するとともに、時間と工程の短縮を図った。「高所作業は慣れてくると怖さを感じなくなる。油断が一番恐い」と、緊張感をもって作業するよう常に目を光らせる。
■「砂防のわかる若手を育てたい」
 建設業界は、担い手が不足し、若手技術者の入職率も低い。「技術の伝承も我々ベテランの役目」。砂防工事に長く携わった経験を生かし、若手技術者の教育用ビデオ「砂防堰堤着手~完成まで」を作成した。社内WGの力を借り、中田切砂防堰堤ができるまでを、伐採から掘削、型枠製作、コンクリート打設や養生、施工の注意点など、タイムラプ動画を交えて編集。国土交通省の若手技術者の教育用にも提供した。
 長野冬季オリンピックの施設を見て「いつか、このような大きなプロジェクトの建設に携わりたい」と建設の道へ。
今回の局長表彰を受け「砂防のすばらしさをわかってくれる若手技術者を育てたい」。自らに続く技術者の育成が次の大きな仕事になる。